Medical Support

一般の動物病院では対応が難しい症例を主治医の先生と相談しながら診療のサポートを行っております。

体外循環心臓手術

葉月会は体外循環心臓手術をサポートしています

日本大学 専任講師 獣医循環器認定医である菅野(かんの)信之先生を中心とした心臓オペチームにより行われております。

 

手先の感覚だけで僧帽弁を修復
心臓の弁の機能が低下することで、呼吸が苦しくなる僧帽弁閉鎖不全症(ぞうぼうべんへいさふぜんしょう)。これまで投薬(※1)による緩和治療が一般的で、完治しない病気とされてきました。しかし、ここ数年、外科治療によって完治するケースが増えてきたのです。手術できる動物病院はまだ少ないですが、日本大学動物病院は、その数少ない病院のひとつ。僧帽弁閉鎖不全症の手術を数多く執刀してきたのが菅野(かんの)信之先生です。 「以前は、15kg以下の犬の手術はサイズが小さすぎて無理といわれていましたが、経験値も上がり、技術も確立されてきて、近年はどんなサイズの犬でも手術するケースが多くなりました。当動物病院の場合でいうと、以前は1ヵ月に1件程度だったのが、現在は月に多いときで7〜8件あります」
同病院での手術の成功率は95%。海外よりも日本での成功率のほうが高いとのことです。
実際、僧帽弁閉鎖不全症の手術とはどのように行われるのでしょうか。人の場合は、機能しなくなった弁を人工弁と取り換えることができますが、犬の場合は、人工弁がありません。そのため、損傷して隙間ができてしまう弁周囲にゴアテックス製の糸を縫合してきんちゃくのように縮めたり、弁を支える腱索をゴアテックス製の糸で再建したり します。こうして僧帽弁がきちんと閉まるようにし、逆流を防ぐのです。弁の幅は約1cm。この手術の難しさのひとつは、患部の小ささと作業の細かさにあります。
「たとえば腱索の長さを調整する場合、手の感触を頼りに文字どおり手加減で行います。長さといっても、せいぜい 1〜2mmなので、明確に何ミリにするというデータはありません。逆流がないかを確認しながら微調整していきます」
さらに、このような繊細な作業を行うには一度心臓の動きを停止し、人工心肺装置を使うのが必須。これがこの手術のもうひとつの難しさです。体の血液を体外の人工心肺装置で循環させるため、犬の体にとっては大きな負担にな ります。このため術中から、さらに術後も気が抜けません。人工心肺装置を伴う手術では、急性腎不全などの合併症が起こるリスクを避けるため、術後も慎重な管理が必要です。心臓外科手術はチーム医療です。治療にかかわる専門性の高い獣医師も7〜8名と多くなります。これは通常の外科手術治療の2〜3倍で、こうした大人数のスタッフによるスムーズな連携が手術を成功へ導きます。

緩和治療では約1年の命が手術によって救える!
僧帽弁閉鎖不全症は手術が成功すれば、術後は定期的な健診を除いて毎月の通院も大量の投薬も必要がなくなります。手術費や入院費などはかかりますが、犬の生活の質は確実に上がり、術後は診療費や薬代などを抑えられます。
「僧帽弁閉鎖不全症は、年をとってから発症し、発症したときはかなりステージ(※2)が進んでいることも多いです。たとえば、ステージCの場合、投薬による緩和療法だと生存期間中央値(※3)は300〜400日。しかし、手術が成功すれば、寿命まで生きることも可能です。あまりにも高齢な犬の場合はおすすめできませんが、それでも飼い主さんのたっての願いで15才の犬を手術したこともあります」
もちろん手術は必ず成功するわけではないので、飼い主さんは、そうしたリスクも含め、愛犬の寿命や生活の質のこと、治療費などを総合的に考えて、手術するかを判断する必要があります。それでも、完治しないといわれてきた病気が治るというのは、飼い主さんに大きな希望を与えてくれます。

※1 投薬による緩和治療
心臓にかかる負担を減らすACE阻害薬、肺に水がたまらないようにする利尿剤、心臓の動きをよくする強心薬などが処方されます。根治しないので、一生飲み続けることになります。
※2 僧帽弁閉鎖不全症のステージ
次の5段階に分かれています。A=心疾患の素因がある。B1=血液の逆流がある。B2=心臓が肥大している。C=肺水腫などの症状が出ている。D=投薬の治療が困難な状態。
※3 生存期間中央値
治療を開始してから、約半数の患者が亡くなるまでの期間。ある病気で約100頭の犬が亡くなったとして、50頭目が亡くなるまでの期間のこと。

 

 

細やかな技術が必要な僧帽弁閉鎖不全症の手術

 

僧帽弁閉鎖不全症とは?
左心房から左心室に血液が流れるとき通過する僧帽弁に異常が起こり、血液が逆流してしまう病気です。逆流すると、全身へ送る血液の量が減ることになり、心臓は働きすぎて疲弊。また、血液の逆流により心臓が拡張したり、心臓の血液にある水分が肺にしみ出す「肺水腫」が発症、やがて「心不全」で亡くなることに。

手術で弁膜と腱索を修復
犬の僧帽弁閉鎖不全症の手術は、僧帽弁の弁膜と、それを支える腱索と呼ばれる組織を修復することになります。弁膜が傷み、隙間があいてしまう場合は、弁のまわり(弁輪)に糸を縫いつけ弁の口を縮め、隙間をふさぎます。また、腱索が傷むと弁がうまく閉まらないので、代用の糸を縫いつけます。

 

 

最新の医療設備が高度な手術を支えている

 

最新の人工心肺装置で術中の犬の体をコントロール
心臓を切開して僧帽弁の手術を行うには60分ほど心臓を止める必要があります。代わりに血液を全身に循環させるために必要なのが人工心肺装置です。

 

精度の高いエコー検査で事前に手術をイメージ
エコー検査によって僧帽弁の状態をかなり正確に把握できるように。弁が厚くなっているのか、うまく機能しているのかなどの様子が観察できます。

 

 

現段階での実施症例

僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する体外循環での心臓手術
MRの犬に対して僧帽弁形成術を行っています。手術のメリットとしては心臓病の症状をなくし、薬をやめるまたは減らすことが可能です。利尿剤による弊害もなくなり、動物の生活の質を上げることができます。肺水腫などの心不全症状が出てきている重症例では平均生存期間は300~400日ですが、手術が成功すれば寿命まで生きることも可能です。内科的療法はあくまで病態の進行を緩やかにするための対症療法であり、外科的療法は弁輪装置の構造異常の再建を目的とした根治治療です。当施設で最も多くご依頼いただいているのも僧帽弁形成術となっており、手術成績も安定しております。

 

 

手術実績

小型犬の成績は96%となっております。

 

 

費用

術前検査費用

2~4万円程度
※紹介いただいた病院で実施していただく場合もあります。
※手術を安全に実施するためにかかる費用です。

手術費用

100〜130万円程度
※税別、手術費用、1~2週間の入院費用を含む。

 

 

リスク

手術にはリスクを伴います。特に重症の末期心不全に関しては栄養状態不良、腎不全、膵炎、を合併している場合には術後に悪化する可能性があります。
※手術のリスクは年齢や併発疾患によって左右されるため、手術に関しては直接お話させていただきます。
※提示している費用を超えることは少ないですが、手術の説明時に詳細にお話します。

 

 

先生の紹介

 

菅野(かんの)信之先生
日本大学動物病院獣医師。日本大学生物資源科学部獣医学科獣医内科学研究室専任講師。日本獣医循環器学会認定医。体外循環を用いた心臓外科に多く携わる専門性の高い獣医師からなる菅野先生の手術チーム。

 

 

お申込み方法

下記より相談フォームへ移動し、必要事項をご記入のうえ送信ください。

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